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2022/05/09
海外大学進学までのスケジュール
留学準備から進学の時期まで
日本社会のグローバル化が大きく影響していると思いますが、日本の高校を卒業してそのまま海外の大学に進学するというケースは増加基調です。多くの日本の高校が海外大学合格者数を公表していますが、その数から見ても、高校生にとって海外大学進学は有望な選択肢になりつつあるといった印象です。海外大学に進学すると就職に不利になる、そのような話は一昔前の話になりました。日本企業の海外大学進学生の採用も活発です。
タイムズ・ハイヤーエデュケーション等の「世界大学ランキング」の「日本のトップといわれる大学でも、世界の中では必ずしもトップ層に位置しない」という評価を前に、外にと飛び出そうとする高校生が増えてきている面もあるかもしれません。
まだまだ日本の高校生にとって、費用面を含めて海外大学進学へのハードルは残りますが、選択肢の拡がりはまさにボーダーレス化しつつあり、その流れは、After Corona、これからも加速されていくでしょう。
ただし、当然ながら、日本の入試制度と海外大学の入試には大きな違いがあります。なので、単に流れに乗るだけでは危険、それなりの準備は必要です。ボーダーレス化が進めば進むほど、トップ層の大学には世界中から志願者が集い競っていく訳ですから、海外大学に入りやすくなったというわけでは決してありません。
ただ有望な選択肢であることは間違いなく、目指すのであればどんな準備が必要か、いくつかポイントをお話ししたいと思います。
海外大学と日本の大学 入試の違い
大学入試といっても広く世界に目を向けると、制度、仕組み等々、それぞれの国に特徴があり、歴史的背景や社会的な事情を反映し、今の姿に至っている、というところでしょうか。
国や大学によって基準は様々
多くの日本の大学の場合、各大学が入試を実施し合否を決めていますが、国によっては、「大学に入るための資格」に相当するようなものを定め、有資格者に対して門戸を解放しているようなケース、さらには入試のようなものを課さずに合否を決めるようなケースもあります。また、同じ国においても、それぞれの大学が特徴を示して合否を判断しているようなことも珍しいことではなく、日本の大学はこう、海外の大学はこう、といったステレオタイプ的な見方ではなく、もう少し目を凝らしてその違いを理解するのは、海外大学を目指す際に重要なポイントかと思います。
海外の大学の視点から日本人高校生を見た場合、日本人高校生が「International Student」のカテゴリーに入り、不十分な語学力を補う意味合いもあって、「Path Way」とか「Foundation」といった、ワンクッション置いてから大学本科に進むようなシステムを活用するような方途もあります。道筋も様々、ですね。また、在学生総数に占めるInternational Studentsの割合をこのくらいにしたいとか、多様性を学内に確保するといった考えから一定の枠を念頭に置いている大学もあります。「International Students」に対する門戸の開き方も様々です。
アメリカでは、個々の能力、資質、強みなどを多面的に評価
アメリカの高等教育機関に進学する日本人高校生が多いからだと思いますが、アメリカの制度的というか入試の特徴については、広く理解されているかと思います。こちらも個々の大学ごとに特徴はありますが、瞬間風速的な学力をみるというよりは、受験生個々の能力、資質、強みなどを他面的に評価し、そのためにエッセイや推薦状を重視している、といったこと、皆さんご存知かと思います。
これからはアメリカのみならず、アジアの国々も含めて、進学先も一層多様化してくるものと思います。海外大学進学を目指すのであれば、まずはマクロ的な特徴の理解を出発点として、どう準備をしていけばいいか、考えていってもらいたいと思います。
海外大学受験準備(その1)
一発逆転は期待しない方がいい、まずはこの点、お伝えしたいと思います。
これまで何の準備もしてこなかった、残りの半年で何とかする、気持ちはわかりますが、海外大学受験に際し、なかなか通用しないかと。(日本の大学を受験する際も同じですけど)
語学力は重要ですが、入試で評価されるのは、語学力だけではありません。一念発起、例えば、TOEFLのスコアを上げただけでは、全てが解決されるわけではありません。
高校時代の成績も重要視されますが、過去に遡って成績を上げることは不可能です。また問われるのは学力ばかりではないとすれば、その問いに答えられるだけの実績や能力を積み上げてきたか、またそれをしっかりと伝えることができるのか、一夜漬けではどうにもなりません。
ではどう準備すればいいか?
大学側に入学意思をアピール
海外の大学の生徒募集の視点から考えてみるのもいいと思います。大学側からのSNSを駆使しての情報発信は最早当たり前、Newsletterも出すでしょうし、Campus TourとかInterviewとか、受験生との接点も豊富に設けられています。大学からすれば入学してもらいたい生徒に情報を届け、ファンを増やして実際に出願、入学してもらいたいと思って活動をしています。大学はどれだけの生徒に合格を出し、そのうち何人が実際に入学し、何人が卒業したか、ここ、見ています。当たり前ですが、誰でもいいからとにかく入学してほしい、ということではありません。
また、「入学してほしい生徒」という場合、語学力があって成績優秀な生徒に入学してほしい、というばかりではなく、「ほしい」の一部は大学への貢献というか、周囲へのポジティブなインパクトが期待できる生徒、という意味合いを含んでいいます。結果、複合的な視点でみていくことになっている、ということだと思います。
これを日本の高校生の立場から考えるとすると、当然、大学で学びたいことが何か、どこで学びたいか(国? 地域? 大学?)、その先も見つめて考えるんだと思いますが、その上で、行きたい大学のメッセージから必要な情報を汲み取ると共に、自分が、大学が期待している生徒だという実感みたいなものを感じつつ出願先を絞っていくことになるんだと思います。それはそれでいいのですが、自分がどう理解するかだけでは不十分で、大学から見て自分が「ほしい」学生だ、ということを大学に理解してもらわないといけません。大学は多くの出願者から合格者を選抜していく訳ですから、フィットしていることを事実として示していく、それも深く印象付けられるように示していかなければならない訳です。ここが一発の試験に合格をかける、という入試ありきの世界との大きな違いだと思います。
例えば、自分がその大学に行きたいと強い意志を持っている場合、メルマガにも登録していない、バーチャル・キャンパスツアーにも参加したことがない、インタビューも受けない、ではその意志は伝わらない、というか、当然関心は低いと思われるでしょう。
TOEFL® TESTのスコア
また自分は英語力がある、と自信があっても、TOEFL® のようなテストでスコアを実際に示すことができなければ、実力を伝えることができません。
自分のやりたいこと、ビジョンをベースに、行きたい大学の期待と自分がフィットする事実を積み上げ、それを示してく、海外大学進学の場合、なぜ自分が海外大学進学を目指しているのか、なぜ自分がその大学に進学したいのか、語学力を含めてそういったところを伝えることができるようにしていくことが準備の要諦かと思います。
一発逆転は難しい、この点、ご理解いただけたでしょうか?
海外大学受験準備(その2)、その出願に向けて
では、もう少し、具体的に。
GPA(成績)の積み上げ
多くの大学が出願時にGPA(成績)の提示を求めています。なぜだか分かりますか?
大学が高校時代の成績の良し悪しを気にするのは当たり前、そうですね。特に理工系の大学にとって、高校時代の理数系の科目の成績は気になるところだと思います。ただ、それに加えて、大学の授業についていけるかどうが、そんなことも見ているはずです。母国の高校で満足のいく成績を収められていない生徒が、果たして言葉の壁も残る世界でついていいけるだろうか? そんな感覚でしょうか。
しかしながら、成績は後戻りできません。後で、しまった!と思うケース、私、個人的にも多く見てきました。
エッセイの準備
またよく言われるエッセイの提出がありますね。これも大学の期待に応えうるかどうか、例えば、大学がポジティブなインパクトを与えてくれる生徒が「ほしい」と思った場合(これは広く大学間に共通する期待だと思いますが)、インパクトを期待させるような経験を積んできたのかどうか、エッセイからそうした点を汲み取りたいということで、出願時にエッセイを課しているということだと思います。語学力の試験結果やGPAからは見て取れない個々人の資質とか意欲みたいなものを、大学はエッセイから読み取っていくんですね。
よく、どんな活動をしてきたかとか、リーダーシップを発揮するこんな経験をしたことがあるとか、エッセイのテーマとして参照されることがあるので、今更、ということになりますが、そこが問われるのであれば、説得力のある事実を示していかなければなりません。
推薦状などは多くの場合、担当の先生等が作成するのでしょうが、「ついていける」「期待に応えられる」、その両面を見るようなことで求められていると思います。
行きたい大学が何を求めているか把握する
出願準備にあたっては、まず行きたい大学が何を求めているのかをはっきり認識するのが第一歩でしょうか。通常、TOEFL®やIELTSといった英語のテストスコア、GPA、推薦状、エッセイなどがセットで求められるのでしょうが、アメリカの場合、SATとかACTといった統一テストのスコアを求めたり、大学によっては高校時代にとるべき科目が決められ、その成績をださなければならなかったり、まずは何を準備しなければならないか、そこをはっきりしないと先に進めませんね。昨今では、 SAT参照するとかしないとか、一旦参照しないと決めた大学がやはり参照することにしたとか、動きもありますので、最新の情報が必要です。
その上で、テストなどでは最低点とかが定められている場合もあるでしょうから、そこも確認して、ということですね。
自分のポートフォリオを準備しよう
その一方で、エッセイとか推薦状のネタというか実績もしっかり準備していく必要があります。自分で整理しメモして、ポートフィリオのようなまとめをしておくことは重要ですし、特別な活動をしたようなケースでは、客観的にその活動を証明できるエビデンスとかも漏れなく用意しておきたいですね。いざ、エッセイを書き始めようとした時には最低限、材料だけは揃っている状態にしてきたい、そうでないと説得力のある内容のものは書ききれないと思います。
ネタ(いい意味でとらえてください)作りに関しては、これも海外大学に進学したいから作るというのではなく、外に目をむけ、チャレンジする姿勢を身につけ、実際にチャレンジした結果が自然と積み上がっていくような取り組みができるといいですね。海外の大学で学ぶということ自体、チャレンジングなことですから、そうした姿勢、力も必要です。(なので、大学はそこを見たいと思っているでしょうね)
課外活動とか、ボランティア活動とか、よくネタとして例があがることがありますが、学びを深めることでもいいんだと思います。それぞれ自分が取り組みたいことにフォーカスして、取り組んで、成果を実感できるようになっていれば、ネタとしてはいいネタになっているのではないでしょうか。
海外大学進学の準備スケジュール(受験準備から入試、入学時期まで)
次には準備のスケジュールの組み立てですね。
この点に関しては、まずは逆算。出願期日は決まっているでしょうから。そこから遡って、いつまでに何を整えていくか、与えられた課題ごとにスケジュールを立ててみるのをお勧めします。余裕を持って、という訳にはいかないかもしれませんが、全部をまとめて最後に、では到底間に合わないと思います。
また、TOEFL®やIELTSといったテストは、実施日が決まっているので、いつテストをうけ、どのテストの結果を大学に参照するか、この辺りの計画も必要ですね。SAT等もしかり、受検する場合、受ける回数も含めて計画は必要です。
また、日本の大学との併願で行くのか、海外大学に絞るのかも全体のスケジュール設定に大きく影響することと思います。そもそも日本の大学入試は一般的に年明けになりますから、AO入試とか推薦入学を除けば、9月始まりの海外の大学の多くの合否が出る前に日本の大学の受験期を迎えることになります。
一方で、海外の大学でも9月入学以外のオプションがあります。また「Path Way」や「Foundation」を活用するような場合、より柔軟にスケジュールを考えられるケースもあります。併願する、しないに関わらず、合否判断が下るまでのスケジュールを念頭に、自分なりの準備のスケジュールを組み立てて、取り組まれるといいですね。
ただ早めに着手しておいた方がいいのは間違いないと思います。途中で出願先を何らかの理由で変更することもあるでしょうし、柔軟な構えを整えていく上でも、いい意味での「ネタ」づくりの上でも、時間軸を長くとらえて準備を進めるのがお勧めですね。
アメリカでは通常、高校一年次から準備を始めるともいわれています。まずは情報を集めて行きたい大学のリストアップから始まるのかもしれませんが、何を大学が求めているか、を想定すると長い期間の取り組みも理解できるかと思います。
価値あるチャレンジ! その先を見据えて
多様な価値観が尊重される時代を迎えて、日本の高校生の進学の選択肢が世界に拡がりつつある状況は歓迎すべきことだと思います。一方、安易に目指せばいいということではなく、ハードルはそれなりに高く、よく考えて準備を進めていく、それもある程度長い時間軸を想定して準備を進めていくことが重要ではないかと思います。
国によっての違いもありますし、個々の大学にもそれぞれ教育方針とかがあって個性があります。情報収集だけではなく、経験者や進路指導の先生、専門家(カウンセラー等)の意見にも耳を傾けていくことも必要だと思います。
ただ、挑戦できる生徒、周囲と調和が取れ、未来を切り開いていけるような生徒が求められているのは、日本の大学も含めて世界に共通することだと感じています。日本の入試も、AO入試とか、総合選抜型とか、少しずつ変わってきています。大学進学が人生のゴールではないわけですから、その先で一層活躍できる生徒が、内外を問わず、求められています。
海外大学進学も視野に入れて、学びの場を自分自身でデザインしていくこと、選択肢の拡がりと共にワクワク感が出てきたのではないでしょうか。 日本の高校生の海外大学進学へのチャレンジ、応援していきたいと思います。